Field Reference · World Models · 基準日 2026-09-11

ワールドモデル

「頭の中で世界を動かしてみるAI」。ワールドモデルの定義から系譜、内部構造、主要モデル、学界の論争、産業応用、韓国の現状まで — 最近の論文・レポート・専門家のコラム・信頼できる記事50件余りを突き合わせて一冊にまとめたリファレンスです。

P(st+1 | st, at)

いまの世界の状態 s と私が取る行動 a が与えられたとき、次の瞬間に世界がどうなるかを予測する関数。ワールドモデルを一行で言えばこの式です。行動 a がなければ「映像予測」、あれば「世界シミュレーション」になります。35

12章 · 付録3参考文献 51
00 · 序文

概要

2025年後半から2026年にかけて、「ワールドモデル(World Model)」はAI業界で最も熱い言葉になりました。Google DeepMindはリアルタイムで歩き回れる世界を作るGenie 3を公開し、ヤン・ルカンはMetaを離れてワールドモデルのスタートアップAMI Labsを設立して10億ドルを超えるシード投資を受け、フェイフェイ・リーのWorld Labsも10億ドルを追加で調達しました。NVIDIAはロボット・自動運転向けのCosmos 3を、韓国政府は340億ウォン規模の「ワールドモデル国産化」事業を始めました。

ところがこの言葉は、人によってまったく違うものを指します。ある人は「ゲームのように操作できる映像生成器」を、ある人は「ロボットの頭の中の予測エンジン」を、またある人は「3D空間を作ってくれるツール」をワールドモデルと呼びます。AMI Labs側の関係者が「6か月以内にすべての会社が投資を受けるために自らをワールドモデルと呼ぶだろう」と皮肉ったほどです。8

この文書は、その混乱を整理することを目的としています。構成は次のとおりです。

  • 1〜2章は概念と背景です。初めての方は、ここまで読めば会話に加われます。
  • 3〜5章は歴史、内部構造、分類体系です。技術的な骨格を理解したい方のための部分です。
  • 6〜8章は実際のモデルと企業、中心となる論争、応用分野です。
  • 9章は、映像・ゲーム・コンテンツ制作者の視点から、いま使えるものとまだできないことを整理しました。
  • 10〜12章は限界、韓国の現状、これから見るべき指標です。付録には用語集、段階別の必読リスト、参考文献があります。
表記の原則本文の上付き数字は付録Cの参考文献番号です。企業が自ら明らかにした性能・計画は「発表によれば」、報道によるものは「報道によれば」と区別しました。展望や解釈のようにこの文書が自ら下した判断は、そのように明記してあります。
第1章

ワールドモデルとは何か

一文の定義、三つのたとえ、そして混同しやすい隣接概念との境界

この章の要点
  • ワールドモデルは、「行動すると世界がどう変わるか」を予測するAI内部のシミュレーターです。
  • 核心は「行動条件付き(action-conditioned)」であることです。行動を入れられなければ、ただの映像生成器です。
  • 目的は絵をきれいに描くことではなく、計画・学習・評価に使える予測です。

一文の定義

Google DeepMindはワールドモデルを次のように定義します。「世界への理解に基づいて世界の一部をシミュレーションし、エージェントが環境の変化と、自らの行動が環境に与える影響を予測できるようにするAIシステム。」1 身体性AI分野の総合サーベイも同じ趣旨で、ワールドモデルを「環境の力学を捉える内部シミュレーター」と呼んでいます。34 韓国のソフトウェア政策研究所(SPRi)は「人工知能が物理世界の構造と力学を理解し、将来の状態を予測する技術」とまとめました。25

三つの定義に共通する要素は三つです。① 世界の現在の状態を圧縮して表現し、② 時間が流れたり行動が加わったりしたときの次の状態を予測し、③ その予測を意思決定に活用します。

三つのたとえ

① キャッチボールをする人

飛んでくるボールを捕るとき、私たちはニュートンの方程式を解きません。代わりに「あの速さであの角度なら、だいたいあそこに落ちる」という感覚で、あらかじめ手を伸ばします。この感覚が脳の中のワールドモデルです。1943年、心理学者ケネス・クレイク(Kenneth Craik)は、生き物が頭の中に外部の現実の「縮小模型(small-scale model)」を持ち歩き、実際に行動する前にその模型の中でいくつもの選択肢を試すという仮説を示しました。これが概念の根っこです。50

② 初心者ドライバーとベテランドライバー

ベテランは、路地からボールが転がり出てくると、まもなく子どもが飛び出してくるのを予想して速度を落とします。まだ起きていない未来を頭の中で先に動かしてみたのです。自動運転業界がワールドモデルに力を入れる理由はここにあります。実際の道路ではほとんど起こらない危険な状況を、仮想で何十億回も経験させられるからです。4

③ 明晰夢の中での練習

2018年のデイビッド・ハ(David Ha)とユルゲン・シュミットフーバー(Jürgen Schmidhuber)の論文〈World Models〉は、AIが自分で学習した世界モデルの中で、つまり「夢の中で」運転やゲームを練習し、その実力を実際の環境に移せることを示しました。37 今日のDreamer 4が、実際のゲームを一度もプレイせず、映像データと想像の中での練習だけでマインクラフトのダイヤモンドを掘ったのも、同じ原理の拡張です。7

混同しやすい隣接概念

概念何をするかワールドモデルとの関係
大規模言語モデル(LLM)次の単語(トークン)を予測世界についての「文章による知識」は豊富ですが、行動に伴う物理的な結果を直接予測するように訓練されてはいません。LLMの内部にワールドモデルが生まれるかどうかは、7章の中心的な論争です。
映像生成モデルプロンプトから数秒〜数分の映像を一度に生成世界の見た目をよく真似ますが、たいていはユーザーが途中で介入できません。行動を受けて1フレームずつつなぐ構造に変わると、ワールドモデルに近づきます(例:Runway GWM-1はGen-4.5ベースの「自己回帰拡散」モデル)。15
3D生成・再構成テキスト・画像から探索できる3D空間を生成空間は一貫していますが、その中で時間と行動に応じて起こること(力学)には別のエンジンが必要です。World LabsのMarbleが代表的です。10
物理エンジン・ゲームエンジン人が組んだルールで世界を計算正確で制御可能ですが、ルールをすべて人がコーディングしなければなりません。ワールドモデルはルールをデータから学習する点が異なります。
デジタルツイン特定の工場・都市を仮想的に複製ワールドモデルがデジタルツインの「頭脳」として使われる流れがあります。NAVERのSeoul World Modelは、実際のソウルの街のデータに生成モデルを組み合わせた事例です。24
VLA(視覚-言語-行動モデル)見て、指示を理解し、ロボットの行動を出力VLAは「何をするか」を決める方策、ワールドモデルは「すればどうなるか」を予測するシミュレーターです。両者を組み合わせ、ワールドモデルの中でVLAを訓練・評価する方式が増えています。29
最も重要な分かれ目2026年3月に〈Not Boring〉に載ったエッセイは次のように整理しています。映像モデルは P(xt+1 | xt)、つまり「この場面の次にはどんな場面が来るか」を学びます。ワールドモデルは P(st+1 | st, at)、つまり「私がこうすると世界はどうなるか」を学びます。ユーザーが行動し、その結果をリアルタイムで見られるという相互作用性が、両者を分けます。35
第2章

なぜ今ワールドモデルなのか

言語の限界、物理データの不足、そしてお金の流れ

この章の要点
  • LLMは文章では世界をうまく説明できても、身体を持つAI(ロボット・自動運転)には足りないという認識が広がりました。
  • ロボットの学習データは、インターネットのテキスト・映像に比べて数十〜数千倍不足しています。ワールドモデルはこのデータを「生成」できます。
  • 投資が急増しました。ワールドモデル分野への投資は、2024年の14億ドルから2025年の69億ドルに増えました(CB Insights)。29

理由1 — 言語だけでは足りないという反省

ヤン・ルカンは以前から「言語は帯域幅が低く派生的な信号であり、主たる学習信号にはなり得ない。人間と動物の知能は、世界を観察し、その中で行動しながら学んだものだ」と主張してきました。9 4歳の子どもは、本を1冊も読まなくても、コップを押せば落ちることを知っています。その子が目で受け取った視覚情報の量は、LLMが学習するテキストの量と同程度かそれ以上だ、というのがルカンが講演でよく挙げるたとえです。

この主張が2025年以降に力を得たのは、LLMの進歩が止まったからではなく、AIを工場・道路・家庭に投入したいという要求が高まったからです。テキストをうまく扱うモデルに「この箱を持ち上げたら隣の箱が崩れるか」を判断させるには、別の種類の知識が必要です。

理由2 — 物理世界のデータの絶対的な不足

リュ・ジェミョン(リュ・ジェミョン)科学技術情報通信部第2次官は、2026年6月のフィジカルAI先導事業の着手報告会で、この問題を次のように要約しました。

「現実でこれをすべて収集するには、あまりにも莫大な費用と時間がかかり、実際のデータだけでは、失敗事例や例外的な危険状況について十分に学習することが事実上不可能だ。」— リュ・ジェミョン 科学技術情報通信部次官、2026年6月9日27

World Labsも、物理的に正確なシミュレーションデータは、インターネット映像に比べて「桁違い(orders of magnitude)」に不足していると説明しています。11 ワールドモデルは、この空白を埋める「データ工場」であり、ロボットが失敗しても怪我をしない「練習場」になります。

理由3 — 技術が臨界点を越えた

2024年初めまで、インタラクティブなワールドモデルは毎秒1フレーム程度で、数秒たつと世界が崩れました。2024年末にGenie 2は10〜20秒持ちこたえ、2025年8月にGenie 3は720p・毎秒24フレームで、数分間一貫した世界をリアルタイムで生成しました。13 「デモ」が「使ってみられるもの」に変わった瞬間、産業の関心が集まりました。

理由4 — お金の流れ

企業時期規模備考
AMI Labs(ヤン・ルカン)2026年3月10.3億ドルのシード投資前の企業価値35億ドル、本社はパリ。NVIDIA・サムスン・トヨタベンチャーズなどが参加8
World Labs(フェイフェイ・リー)2026年2月10億ドルのシリーズBオートデスクが2億ドルのアンカー、AMD・NVIDIAなどが参加。累計約12.3億ドル11
Runway2026年2月3.15億ドル累計8.6億ドル、企業価値53億ドル16
General Intuition2025年10月1.34億ドルのシードゲーム録画プラットフォームMedalの年20億本の映像を学習データに活用21
分野全体2024→202514億 → 69億ドルCB Insights集計のワールドモデル投資額29

市場の反応も大きなものでした。2026年1月にGoogleが一般の有料ユーザーにProject Genieを公開すると、ユニティ、ロブロックス、テイクツーなどゲーム関連株が大きく下落したという報道が相次ぎました。3 「ゲームの作り方そのものが変わるかもしれない」という期待と恐れが、同時に反映された場面です。

第3章

系譜:1943年から2026年まで

心理学の仮説から強化学習の道具へ、そして再び基盤モデルの主戦場へ

ワールドモデルは新しいアイデアではありません。〈Not Boring〉のエッセイは、歴史を五つの波に分けています。理論的土台(1990〜91)、可能性の証明(2018〜19)、人間レベルの性能(2020〜22)、現実世界との相互作用(2023〜24)、そして現在の配備段階です。35 下の年表はこの区分に従いつつ、最新の出来事を補強しました。

  1. 1943根っこ — ケネス・クレイクが『説明の本質』で「頭の中の縮小模型(small-scale model)」仮説を提示50
  2. 1990–91シュミットフーバーのリカレントニューラルネットワークによる世界モデルの研究、リチャード・サットンのDyna構造 — 「実際の経験+モデルで想像した経験」を一緒に学習に使う発想35
  3. 2018年3月可能性の証明 — ハ&シュミットフーバー〈World Models〉。視覚(VAE)・記憶(MDN-RNN)・制御器に分けた構造、「夢の中での訓練」を実演37
  4. 2019年11月DeepMind MuZero — ルールを教えなくても、囲碁・チェス・アタリの力学と価値を自ら学習(2020年にNature掲載)48
  5. 2020–23人間レベル — ダニジャル・ハフナーのDreamer系列。DreamerV2がアタリで人間レベル、DreamerV3が人の実演なしでマインクラフトのダイヤモンドを採掘47
  6. 2022年6月ヤン・ルカン〈A Path Towards Autonomous Machine Intelligence〉。ワールドモデルを中心に据えた認知構造とJEPAを提案38
  7. 2023Meta I-JEPA、Wayve GAIA-1(自動運転の生成ワールドモデル)。LLM内部の「世界表現」研究(Othello-GPTなど)が活発化42
  8. 2024年2月生成型の登場 — OpenAI Sora技術報告書〈ビデオ生成モデルは世界シミュレーター〉。DeepMind Genie(第1世代、110億パラメータ、行動ラベルのないゲーム映像から「潜在行動」を学習)393
  9. 2024年8〜10月Google GameNGen(ニューラルネットだけでDoomをリアルタイム動作)、Decart・Etched Oasis(マインクラフト風のリアルタイム生成)
  10. 2024年12月DeepMind Genie 2 — 画像1枚から3D世界を生成、10〜20秒持続、360p40
  11. 2025年1月NVIDIA Cosmosワールド基盤モデルプラットフォーム(CES)。発表によれば2,000万時間分の実世界データで学習14 · DeepMind・INSAITのPhysics-IQ — 「視覚的なリアルさ ≠ 物理の理解」30
  12. 2025年2月マイクロソフト Muse(WHAM)がNature掲載 — ゲーム〈Bleeding Edge〉のプレイデータで学習したゲームプレイ生成モデル22
  13. 2025年6月Meta V-JEPA 2 — 100万時間以上の映像で自己教師あり学習、62時間未満のロボット映像だけで、初めての環境で物を掴んで置くことに成功5
  14. 2025年8月リアルタイムの相互作用 — DeepMind Genie 3。720p・24fpsのリアルタイム、数分間の一貫性、約1分の視覚記憶、テキストで出来事を挿入(「プロンプト型の世界イベント」)1
  15. 2025年9月OpenAI Sora 2 — 「映像のGPT-3.5の瞬間」と自評17 · Dreamer 4 — オフラインデータだけでマインクラフトのダイヤモンド、単一GPUでリアルタイム推論7
  16. 2025年10月テスラ、FSDとOptimusが共有する「ニューラルネットの世界シミュレーター」を公開19 · General Intuition 1.34億ドルのシード21
  17. 2025年11月World Labs Marbleを商用リリース10 · ルカン、Meta退社と起業を発表43 · DeepMind SIMA 2エージェント44
  18. 2025年12月Runway GWM-1(Worlds・Robotics・Avatars)15 · Wayve GAIA-3(150億パラメータ、自動運転の評価用)20
  19. 2026年1月配備の時代 — Google Project Genie、米国のAI Ultra購読者に公開(60秒制限)2
  20. 2026年2月Waymo World Model(Genie 3ベース、カメラ+ライダーを同時生成)4 · World Labsが10億ドルを調達 · WorldArenaベンチマーク32
  21. 2026年3月AMI Labs 10.3億ドルのシード8 · Meta FAIR V-JEPA 2.16 · NAVER Seoul World Model24 · OpenAI、Soraアプリの終了を発表した後、チームをロボティクス向けの世界シミュレーション研究に転換18
  22. 2026年5〜6月SPRiイシューレポート〈ワールドモデル〉25 · NVIDIA Cosmos 3(推論・生成・行動を一つのモデルに)12 · 科学技術情報通信部のフィジカルAI先導事業が着手(340億ウォン)26
  23. 2026年7〜8月TIMEのコラム〈ワールドモデルはAIの次のフロンティア〉36 · PlayWorldベンチマーク、Genie 3など9モデルを比較33
第4章

解剖学:ワールドモデルの部品

観測を圧縮し、行動を受けて未来を動かし、その未来で計画する

この章の要点
  • ほとんどのワールドモデルは、エンコーダー → 潜在状態 → 力学予測器 → (デコーダー) → 計画という骨格を共有しています。
  • 違いは「予測をどこで行うか」です。ピクセルで行えば生成型、抽象空間で行えば潜在型です。
  • 最新モデルに共通する秘訣は、ラベルのない大量の映像+少量の行動データです。
ワールドモデルの基本構造:観測がエンコーダーを通って潜在状態になり、記憶と行動を受け取った力学予測器が次の状態を予測し、プランナーがその予測で次の行動を選ぶ循環構造 観測 xt カメラ・ライダー・画面 エンコーダー 圧縮・抽象化 潜在状態 st 世界の要約 力学予測器 P(s′ | s, a) 予測状態 ŝt+1 想像した未来 デコーダー → 画面 生成型のみ 記憶 過去のフレーム・状態 行動 at 操作・命令・テキスト プランナー・方策 コスト・報酬を評価 選択
図1. ワールドモデルの基本骨格(この文書の図)。青い線は「行動を入れ、結果を見て、また行動を選ぶ」想像の中の循環です。潜在型(JEPAなど)は点線のデコーダーなしに抽象空間だけで予測し、生成型(Genie、Soraなど)は各ステップを画面に描き出します。

部品1 — エンコーダー:世界を要約する

カメラの1シーンには数百万個のピクセルがありますが、判断を下すのに必要な情報は「コップがテーブルの端にある」程度です。エンコーダーは観測をこのような要約(潜在状態、latent state)に圧縮します。ハ&シュミットフーバーの2018年のモデルではVAEがこの役割を担い、37 最近は大型のビジョントランスフォーマーがこれを担います。良いエンコーダーは、木の葉の揺れのように予測できず役にも立たない情報は捨て、物体の位置・速度のように重要な情報は残します。ルカンのJEPAは、まさにこの「捨てるものは捨てる」を設計原則にしています。9

部品2 — 力学予測器:未来を動かす

ワールドモデルの心臓部です。現在の状態と行動を受けて次の状態を出します。これを繰り返すと、数秒、数分先の未来まで「ロールアウト(rollout)」できます。実装方式は大きく二つです。

  • 自己回帰(autoregressive):1ステップずつ順番に次を予測します。ユーザーの入力を毎ステップ反映できるので、リアルタイムの相互作用に有利です。Genie 3、GWM-1がこの方式です。15
  • 全域予測(global difference prediction):未来の区間全体を一度に推定します。品質は高いものの、途中での介入が難しくなります。従来の映像生成モデルに近い方式です。34

最近は両方式を混ぜた「自己回帰拡散(autoregressive diffusion)」が主流になりました。拡散モデルで一塊(チャンク)ずつ高品質なフレームを作り、チャンク同士は自己回帰でつなぐ方式です。

部品3 — 行動:何が「操作」なのか

行動は、ゲームパッドの入力(WASD、カメラ回転)でも、ロボットの関節コマンドでも、自動車の操舵でも、「雨を降らせて」というテキストでもありえます。Genie 3の「プロンプト型の世界イベント」は、テキストを行動として使う例です。1 Waymo World Modelは、走行行動、道路配置、言語の三つをすべて制御入力として受け取ります。4

問題は、インターネット映像には「このときどのボタンを押したか」というラベルがないことです。ここから二つの解決策が生まれました。Genie 1は映像内のフレームの変化から潜在行動(latent action)を自ら推論し、3 Dreamer 4は少量の行動ラベルつきデータで「行動条件付け」を学び、知識の大部分はラベルのない映像から得ました。7 V-JEPA 2も100万時間を超える映像で事前学習した後、62時間未満のロボット映像だけを追加して、行動条件付きモデル(V-JEPA 2-AC)を作りました。5

部品4 — 記憶:世界が崩れないように

振り返ってからもう一度前を見たとき、建物がそのままでなければなりません。これが「一貫性」であり、ワールドモデルの最も難しい課題です。Genie 2は10〜20秒、Genie 3は約1分前までの視覚記憶を保ちます。31 記憶を延ばす方法としては、過去のフレームを長く参照する方式、3D表現(ガウシアンスプラット・メッシュ)を別に保持する方式、外部データを検索して付け加える方式が競っています。NAVERのSeoul World Modelは、実際のストリートビュー画像を検索して絶えず「再接地(re-grounding)」することで、数百メートルの移動でも空間を保ちました。24

部品5 — デコーダー:描くのか、描かないのか

予測した状態を、人が見られる画面に変える部品です。ゲーム・映像・シミュレーターのように人が見る用途には必須ですが、ロボットが計画を立てるだけなら不要です。この部品を置くか置かないかが、7章の大論争につながります。

部品6 — プランナーと方策:想像を行動に

複数の候補行動をワールドモデルの中で動かしてみて、結果が最も良い行動を選びます(モデル予測制御、MPC)。あるいはワールドモデルの中で強化学習により方策を訓練してから現実に配備します。Dreamer 4は後者で、2万回を超えるマウス・キーボード操作が必要な課題を、想像の中での訓練だけでやり遂げました。7

空間表現の四つの方式

世界を何で表すかも重要な設計上の選択です。2025年の身体性AIサーベイは四つに分けています。34

表現説明長所代表例
全域の潜在ベクトル世界全体を一つのベクトルに圧縮速くて軽いWorld Models(2018)、Dreamer
トークン列画像・映像をトークンに刻み、トランスフォーマーで処理LLM技術を再利用でき、マルチモーダルの結合が容易Genie、GAIA、Cosmos
空間グリッド鳥瞰図(BEV)やボクセルのように幾何に合わせた格子自動運転のように空間の精度が重要な場面に有利自動運転の占有予測モデル
分解レンダリング表現3Dガウシアンスプラット・NeRFのような明示的な基本要素視点を変えても形が一貫Marble、HY-World
第5章

分類:4枚の地図

誰が何を「ワールドモデル」と呼んでいるのかを整理する四つの視点

この章の要点
  • 唯一の正解の分類はありません。しかし四つの地図を重ねて見れば、どの製品でも位置を示せます。
  • 最も実用的な二つの問い:「ピクセルを生成するか」と「出力は人向けか、機械向けか」。

地図1 — 二つの流れ:潜在型 vs 生成型

最も広く使われている区分です。4635

潜在型(Latent · 理解中心)

世界を抽象的な数値空間に圧縮し、その中だけで未来を予測します。画面は描きません。

  • 長所:効率的、不要な細部を無視、計画にそのまま使える
  • 短所:人が結果を目で確認しにくい
  • 代表例:JEPA系列(V-JEPA 2・2.1)、Dreamer、MuZero、AMI Labs

生成型(Generative · シミュレーション中心)

未来を実際の映像フレームや3Dシーンとして描き出します。人が見て操作できます。

  • 長所:解釈できる、ゲーム・映像・データ生成にそのまま活用できる
  • 短所:演算コストが大きく、それらしさと正確さを混同しやすい
  • 代表例:Genie 3、Sora 2、Cosmos、GWM-1、GAIA-3、Waymo WM

地図2 — フェイフェイ・リーの三つの類型:レンダラー · シミュレーター · プランナー

World Labsは2026年6月、出力物を基準にワールドモデルを三つに分けました。11

類型出力評価基準例
レンダラー人が見るピクセル視覚的な品質(明示的な3D理解はなくてもよい)映像生成モデルの大半
シミュレータープログラムが計算できる、物理的・幾何学的に忠実な状態ニュートンの法則を守っているかMarble(衝突メッシュを出力)、物理ベースのデジタルツイン
プランナー行動エージェントが目標を達成するかV-JEPA 2-AC、Dreamer 4

World Labsは、このうちシミュレーターが要(linchpin)だと主張します。シミュレーションがうまくできればレンダリングと計画はついてくるが、その逆は成り立たないという論理です。11 もちろん、これは3Dシミュレーター側に立つ会社の見方であることも、合わせて覚えておく必要があります。

地図3 — SPRiの韓国型分類

ソフトウェア政策研究所は2026年5月の報告書で、パラダイムと目的の二つの軸に分けました。25

  • パラダイム別:明示的(未来を画像・映像として直接生成、解釈性が高く計算コストが大きい) / 暗黙的(抽象空間でのみ計算、効率的だが解釈が難しい) / シミュレーターベース(既存の物理エンジンを活用) / ハイブリッド(複数方式を統合、例:Genie 2)
  • 目的別:映像生成(Genieなど) / 自動運転(テスラのワールドモデル、DriveDreamerなど) / 自律エージェント(Dreamer、JEPAなど)

地図4 — 学術サーベイの三つの軸

2025年の身体性AIワールドモデルのサーベイ(Liほか)は、機能・時間・空間の三つの軸を提案しました。34

  • 機能:特定の課題の意思決定に結びついたモデル(decision-coupled) vs 汎用シミュレーター(general-purpose)
  • 時間:逐次シミュレーション(自己回帰) vs 全域差分予測(並列)
  • 空間:全域の潜在ベクトル / トークン列 / 空間グリッド / 分解レンダリング表現(4章の表を参照)
実践的な見分け方新しい「ワールドモデル」の発表を見たら、五つを確認してください。① 行動を入力として受け取るか ② リアルタイムか ③ 何分間一貫性が保たれるか ④ 出力はピクセルか、3Dか、状態・行動か ⑤ ロボット・エージェントの学習に実際に使われたという証拠があるか。この五つの欄を埋めれば、マーケティングの文句と実体が区別できます。(この文書の整理)
第6章

主要プレイヤーとモデル図鑑

2026年9月時点で、必ず知っておくべき企業とモデル

タグの潜在型は抽象空間での予測、それ以外はピクセル・3Dを生成するモデルを指します。数値は各企業の発表を基準としています。

ビッグテックの研究所

Google DeepMindGenie 3 · Project Genie · SIMA 2

Genie 3(2025年8月)は、テキストプロンプトから探索できる世界をリアルタイムで生成します。720p、毎秒24フレーム、数分間の相互作用、約1分前までの視覚記憶を保ちます。物理はコーディングされたものではなく、学習されたものです。天気を変えたり物体・人物を登場させたりする「プロンプト型の世界イベント」に対応し、SIMAエージェントがGenie 3の作った世界の中で目標を遂行する実験も行いました。公式に示された限界は、限られた行動空間、複数エージェント間の相互作用、実際の地理の正確な再現、文字のレンダリング、数分という持続時間です。1

Project Genie(2026年1月29日)は、Genie 3・Nano Banana Pro・Geminiを束ねた一般向けプロトタイプです。米国のAI Ultra購読者(18歳以上)に公開され、世界のスケッチ・探索・リミックス機能を提供しますが、生成は60秒に制限されています。2

系譜は、Genie 1(2024年、2D、毎秒約1フレーム) → Genie 2(2024年12月、3D、10〜20秒、360p) → Genie 3へと続きます。3 Genie 3は、Waymo World Modelの基盤にもなりました。4

生成型リアルタイムの相互作用エージェント訓練場
Meta FAIRI-JEPA → V-JEPA → V-JEPA 2 → 2.1

V-JEPA 2(2025年6月)は、100万時間以上のインターネット映像で自己教師あり学習した潜在型ワールドモデルです。動作理解(Something-Something v2 77.3%)、行動予測(Epic-Kitchens-100 recall@5 39.7)などで最高水準を記録し、ロボット映像62時間未満で作ったV-JEPA 2-ACは、二つの別々の研究室で、初めての環境のFranka(フランカ)ロボットアームで物を掴んで置くことをこなしました(目標画像を与えて計画)。5

V-JEPA 2.1(2026年3月)は、見えているトークンと隠されたトークンの両方に学習信号を与える「密な予測損失」で細かな特徴を改善し、ロボットの把持で20点近い向上を報告しました。6

潜在型オープン研究ロボット計画
NVIDIACosmos → Cosmos 3

Cosmos(2025年1月、CES)は、ロボット・自動運転の開発者向けのオープンな「ワールド基盤モデル」プラットフォームです。14 Cosmos 3(2026年5月31日、GTC台北)は、視覚推論、世界生成、行動予測を一つのシステムに統合しました。テキスト・画像・映像・音・行動を理解し生成し、推論トランスフォーマーと生成トランスフォーマーを組にした「混合トランスフォーマー(MoT)」構造を使います。12 技術報告書によれば、Edge(4B)・Nano(16B)・Super(64B)の三つの規模があり、公開時点でオープンソースの画像・映像生成とロボット方策評価(RoboArena)で最上位圏を主張しました。13 サムスン・LG・斗山など韓国企業も、開発パートナーに名を連ねました。12

生成型+推論オープンモデルフィジカルAI
OpenAISora → Sora 2 → 世界シミュレーション研究

2024年のSora技術報告書のタイトルが〈ビデオ生成モデルは世界シミュレーター〉だったほど、OpenAIは映像生成をワールドモデルへの道と位置づけてきました。39 Sora 2(2025年9月)は、バスケットボールが外れればバックボードに跳ね返るように、「失敗」まで物理的に再現すると主張しました。17

しかし2026年3月、OpenAIはSoraアプリの終了を発表し、アプリは4月26日に閉じました。コンピューティング資源の負担が理由と報じられ、Soraチームは「実際の物理的課題を解決するロボティクスのための世界シミュレーション研究」へと方向を転じました。18 消費者向けの映像生成とワールドモデル研究の進む道が分かれた、象徴的な出来事です。

生成型ロボティクスへ転換
MicrosoftMuse (WHAM)

ゲーム〈Bleeding Edge〉のプレイデータで学習した「世界と人間行動のモデル(WHAM)」で、2025年2月にNatureに掲載されました。ゲームの企画段階でプレイの場面を素早く作ってみる「ゲームプレイのアイデア出しツール」として位置づけています。22

生成型ゲーム

ワールドモデル専門のスタートアップ

AMI Labsヤン・ルカン · パリ

ルカンが2025年11月にMetaを離れて設立した会社で、43 2026年3月に10.3億ドル(約8.9億ユーロ)のシードを調達しました(投資前の価値35億ドル)。ルカンが会長、医療AIスタートアップNablaを率いていたアレクサンドル・ルブランがCEO、サイニン・シエ(Saining Xie)が最高科学責任者を務め、パリの本社のほかにニューヨーク・モントリオール・シンガポールに拠点を置きます。中核技術はJEPAで、最初の応用分野としてヘルスケア(Nablaとの協力)に言及しました。8

潜在型JEPA
World Labsフェイフェイ・リー · Marble

「空間知能(spatial intelligence)」を掲げる会社です。2025年11月に初の商用製品Marbleをリリースしました。テキスト・画像・映像・パノラマ・3Dレイアウトを受け取って探索できる3D世界を作り、ガウシアンスプラット・メッシュ・映像として書き出します。構造と外観を分離して編集する3Dエディタ「Chisel」、Vision Pro・Quest 3でのVR鑑賞に対応しています。リリース当時の料金は、無料(4回)、月20・35・95ドルのプランでした。10

フェイフェイ・リーは「空間知能なしには、真に知的な機械という私たちの夢は完成しない」と言います。10 NVIDIAは、Marbleを活用してロボット学習環境の構築を数週間から数時間に短縮したワークフローを紹介したこともあります。11

3D生成シミュレーター志向映像制作
RunwayGWM-1 · Gen-4.5

映画制作者向けの映像AIとして出発し、ワールドモデルへと領域を広げました。GWM-1(2025年12月)は、Gen-4.5ベースの自己回帰拡散モデルで、探索型の世界(GWM Worlds)、ロボット視点の合成データ(GWM Robotics)、対話型アバター(GWM Avatars)の三つに分かれます。最大2分、1280×720、毎秒24フレームです。15 共同創業者のアナスタシス・ゲルマニディスは、ワールドモデルをロボット・創薬・気候研究を加速する「科学インフラ」と説明しました。16

生成型リアルタイム映像制作
General IntuitionMedalのゲーム映像

ゲーム録画プラットフォームMedalから分社化しました。月1,000万人のユーザーが投稿する年20億本のゲーム映像を活用し、人のように画面だけを見て操作するエージェントを訓練します。ワールドモデルそのものを販売するより、エージェントを作ることに集中して、ゲーム会社との著作権の衝突を避けようとしている点が特徴です。2024年末にOpenAIがMedalの買収に5億ドルを提示したという報道もありました(双方未確認)。21

生成型エージェントゲームデータ
Decart · Odysseyなどリアルタイム生成の系列

Decartは2024年にマインクラフト風のリアルタイム生成デモOasisで注目され、〈Not Boring〉によれば、企業価値31億ドルで1億ドルを調達しました。35 このほかにも、リアルタイムのインタラクティブ映像スタートアップが多数登場しました。

生成型リアルタイム

自動運転・ロボット企業

WaymoWaymo World Model

2026年2月に公開。Genie 3をベースに、カメラとライダーのデータを一緒に生成します。走行行動(「もしこのようにハンドルを切っていたら?」)、道路・交通の配置、言語(天気・時間帯)の三つで制御し、竜巻・洪水・逆走車両・ゾウの出現・火災のようなまれな状況をシミュレーションします。4

生成型マルチセンサー安全検証
Teslaニューラルネットの世界シミュレーター

2025年10月、AIソフトウェア副社長のアショク・エルスワミが公開しました。車両フリートの映像で学習してAIの行動に反応する映像を生成し、新モデルの閉ループ評価、敵対的シナリオの生成、大規模な強化学習に使います。同じシミュレーターが、ヒューマノイドのOptimusにも適用されると主張しました。19

生成型閉ループ評価
WayveGAIA-1 → 2 → 3

英国の自動運転企業。GAIA-3(2025年12月)は150億パラメータでGAIA-2の2倍、複数の大陸・車種の10倍多いデータで学習しました。映像合成にとどまらず、「自動運転システムの評価」を目的に設計したことを強調しています。20

生成型評価ツール

中国と韓国

Tencent HunyuanHY-World · GameCraft

HunyuanWorld 1.0に続き、3D世界を再構成・生成・シミュレーションするマルチモーダルのワールドモデルHY-World 2.0、リアルタイムの相互作用向けのHY-WorldPlay(HY-World 1.5)、ゲーム向けのHunyuan-GameCraftをオープンソースで公開し、中国陣営を牽引しています。23 SPRiの報告書は、中国の事例としてGigaAIのGigaWorld-1も挙げています。25 2026年のPlayWorldベンチマークには、LingBot-World、Matrix-Game 3.0など中国系のオープンモデルが多数含まれました。33

オープンソース3D+リアルタイム
NAVERSeoul World Model

2026年3月に公開された論文〈Grounding World Simulation Models in a Real-World Metropolis〉。架空の都市を想像する代わりに、近隣のストリートビュー画像を検索して条件として与える方式(検索拡張)で、数百メートルの移動でも、実際のソウルの地理に忠実で時間的に一貫した映像を生成します。ソウル・釜山・米国アナーバーで、既存の映像ワールドモデルより優れた結果を報告し、ICML 2026のエキスポでも発表されました。24

生成型実世界への接地デジタルツイン
LGエレクトロニクス・コンソーシアムフィジカルAI先導事業

科学技術情報通信部・IITPの「フィジカルAI先導技術開発」事業の主管機関です。マインドAI、ロボティス、クラウドワークス、アルチェラ、KT、ホリデイロボティクス、KAIST、ソウル大学、TTAが参加し、ワールド基盤モデル(WFM)とロボット基盤モデル(RFM)を開発します(11章を参照)。2628

国策製造・物流
第7章

大論争:ピクセルを描かなければ理解できないのか

ワールドモデルをめぐる三つの戦線と、その証拠

この章の要点
  • 戦線1:世界を理解するには描かなければならないのか(生成型)、抽象的に予測すれば十分なのか(潜在型)?
  • 戦線2:リアルな映像を作るモデルは物理を「理解」しているのか?複数のベンチマークは「そうではない」に近い結果です。
  • 戦線3:LLMの中にはすでにワールドモデルがあるのか?証拠は割れています。

戦線1 — ルカン 対 生成型陣営

ルカンの立場は明確です。ピクセルを一つひとつ予測するのは、「予測できず無関係なエントロピー」にモデルの容量を浪費することだというのです。木の葉が正確にどう揺れるかは誰にも予測できず、知る必要もありません。そのためJEPAは、元のピクセルではなく抽象的な表現を予測し、行動の結果を予測して「行動する前に計画」することに集中します。9 TIMEは、ルカンがSoraのような映像生成器をワールドモデルとは認めていないと整理しました。36

反対側は、「十分にリアルにレンダリングできるなら、そのレンダリングこそが理解だ」という立場に近いものです。46 General Intuition側は、ピクセルレベルの細部が解釈可能性を与え、人が結果を目で検証できるようにすると見ています。35 何より、生成型ワールドモデルは、ゲーム・自動運転の検証・データ生成という「売れる使い道」をすでに確保しています。

この文書の解釈2026年の流れは、「勝負」というより「収斂」に近いものです。Cosmos 3は、推論トランスフォーマー(理解)と生成トランスフォーマー(シミュレーション)を一つのモデルに結合し、13 Marbleは、人が見るガウシアンスプラットと、物理計算用の衝突メッシュを一緒に書き出します。11 用途に応じて、二つの表現をどちらも握る方向に向かっています。

戦線2 — リアルさは理解ではない

この戦線では、実証研究が積み重なりました。

  • Physics-IQ(DeepMind・INSAIT、2025):流体・光学・固体力学・磁気・熱力学の問題でSora、Runway、Pika、Lumiereなどを試した結果、物理的な理解は「深刻に限られており、視覚的なリアルさとは無関係」でした。ただし一部の事例では成功しており、観察だけで一部の原理を学べる可能性は残しました。30
  • WorldArena(2026年2月):身体性ワールドモデルを16の指標で評価した結果、「高い視覚品質が、そのまま強い身体性課題の能力につながるわけではない」という結論を出しました。特に、行動計画の性能と視覚品質の相関は、ピアソンのr = 0.36にとどまりました。32
  • PlayWorld(2026年8月):Genie 3を含む9つのインタラクティブモデルを、AIプレイヤーで長時間試した結果、見える構造はよく保つものの、視界の外で起こるべき変化や持続的な状態の変化に弱く、同じ場所に戻るとランドマークが別の位置に再生成される問題が明らかになりました。33

戦線3 — LLMの中にワールドモデルはあるのか

あるという側の証拠。オセロの棋譜だけで学習したGPTが、内部に盤面の状態を表現しているという研究(Othello-GPT、2023)、42 LLMの内部から地名の緯度・経度や出来事の時点が線形に読み取れるという研究(Gurnee & Tegmark)41が代表的です。

ないという側の証拠。ハーバード・MITの研究チーム(Vafaほか、ICML 2025)は、惑星の軌道データで学習して軌道予測がきわめて上手なモデルでも、新しい物理課題に適応させてみるとニュートンの力の法則を適用できないことを示しました。モデルは法則ではなく「課題ごとのヒューリスティック」を身につけたというのです。31 ケプラーの観測がニュートンの法則につながったように、予測がうまいことと原理を発見することは別のことだという指摘です。ゲイリー・マーカスも、生成AIが頑健な世界モデルを形成できないという批判を、粘り強く続けてきました。49

「予測精度が高いからといって、世界についての正しい帰納バイアスを持っているわけではない。」— Vafa, Chang, Rambachan, Mullainathan (ICML 2025) の要旨31

論争の読み方

三つの戦線は、結局一つの問いに集まります。「このモデルをどこに使うのか?」人が見る映像を作るには、それらしさで十分かもしれません。しかし、ロボットがガラスのコップを掴んだり、自動車がブレーキを踏んだりするには、正確さが必要です。WorldArenaが視覚品質とは別に「機能的な有用性」を測る理由は、ここにあります。32

第8章

応用分野

ワールドモデルがすでにお金と時間を変えつつある六つの領域

分野ワールドモデルの役割代表事例成熟度(この文書の判断)
自動運転まれで危険な状況の生成、反事実(what-if)の試験、閉ループ評価Waymo WM,4 Tesla,19 GAIA-320実務に投入
ロボティクス合成データの生成、方策の評価、行動前の計画V-JEPA 2-AC,5 Cosmos 3,12 GWM Robotics15初期の配備
ゲーム・インタラクティブプロンプトでプレイ可能な世界を生成、企画のプロトタイピングProject Genie,2 Muse,22 HY-World23体験・プロトタイプ
映像・映画制作一貫した仮想セット、カメラ探索、アバターMarble,45 GWM Worlds・Avatars15実験的な活用
AIエージェントの訓練無限の練習場、想像の中での強化学習SIMA 2 in Genie 3,44 Dreamer 47研究段階
地球・科学気象・気候・地球システムの予測GraphCast, NVIDIA Earth-2, Googleの洪水予測36一部運用中

自動運転:最初にお金になる場所

自動運転が先行している理由は明快です。膨大な走行映像がすでにあり、実際の道路での試験は遅くて高く、最も重要な事故の状況はほとんど起こりません。Waymoは、ワールドモデルによってWaymo Driverが「仮想世界で何十億マイルも走り、複雑なシナリオを身につける」と説明しています。4 Wayveは、GAIA-3で合成試験の棄却率を5分の1に減らしたと明らかにしました。20

ロボティクス:データ不足の解決策

ロボット分野は2025年の1年間で407億ドルを調達し、これはベンチャー投資全体の9%でした(CB Insights)。29 ワールドモデルは三つの方法で使われます。① 実際には集めにくい操作データを生成し、② 新しいロボット方策を実機なしで仮想的に採点し(「原子ではなくビットで評価」)、③ ロボットが行動する前に結果を先に動かしてみます。韓国政府の先導事業が「ロボット動作の成功率20ポイント向上」を目標に掲げたのも、この流れです。26

ゲーム:期待と恐れが同居する場所

Project Genieは「ゲームをコーディングせずに生成する時代」を予告しましたが、60秒の制限と操作の不安定さが示すように、まだ完成したゲームに取って代わることはできません。2 現在最も現実的な使い道は、企画段階での素早いプロトタイピング(Museの位置づけ)と、人のようにプレイするエージェントの訓練(General Intuition)です。2221

地球科学:静かだが最も古い成功

TIMEのコラムで、元NASAの気候科学者セリーヌ・ヘルバイエは、ワールドモデルを地球システムの問題に拡張すべきだと主張します。ニューラルネットの気象モデルはすでに多くの指標で物理ベースの予報を上回っていますが、極端な気象の予測ではまだ遅れており、地球が一度も経験したことのない状態(例:大西洋循環の崩壊後)は予測できないという限界も、あわせて指摘しました。36

第9章

クリエイターのための実務ガイド

映像・広告・ゲーム・教育の現場で、いま使えるものと、まだ待つべきもの

この章の要点
  • いま制作の現場でワールドモデルが持つ最大の価値は、「空間の一貫性」です。ショットごとに背景が変わる映像生成AIの持病を和らげてくれます。
  • 一方で、長回し、文字、複数の人物の複雑な相互作用は、まだ弱点です。

映像生成AIと何が違うのか

Seedance、Kling、Veoのような映像生成モデルは、一度に1ショットを作ります。ショットを複数作ると、同じ部屋でも窓の位置や照明が少しずつ変わり、それを合わせるために、参照画像とプロンプトを繰り返し調整することになります。ワールドモデル系のツールは、まず一つの世界(セット)を作り、その中でカメラを動かして複数のショットを取り出す方式なので、連続性の問題を構造的に減らしてくれます。

いま使えるワークフロー:「バーチャルバックロット」

World Labsが紹介した映画制作の事例は、次の六つのステップに従います。45

  1. 世界の生成 — 奥行きと照明が一貫した3Dセットを作る(Marble)。
  2. カメラ探索 — セットの中を歩き回り、複数のアングルでフレーミングする。
  3. 素材の抽出 — 合成用のスチルとプレートを書き出す。
  4. 人物の合成 — AIで作ったキャラクターを環境に載せる。
  5. アニメーション — 映像生成ツールで動きとタイミングを付ける。
  6. 最終編集 — サウンドデザイン、カラーグレーディング、編集で仕上げる。

事例に参加したある制作者は、「セットを固定したら、動きと感情を思う存分試せた。空間が、演出できる確かなものを与えてくれた」と語りました。45 一度作ったセットは複数のエピソードにわたって再利用できるため、シリーズものやショートドラマのように同じ空間が繰り返されるフォーマットには特に有利です。

ツール向いている用途留意事項(公開時点)
World Labs Marble仮想セット・ロケーションのプリビズ、VRロケハン、ガウシアンスプラット・メッシュで3Dツールと連携無料4回、有料は月20〜95ドル。商用利用権はProプランから10
Google Project Genie世界観のコンセプト体験、インタラクティブなアイデアのスケッチ米国のAI Ultra購読者のみ、60秒制限、物理・操作が不安定2
Runway GWM Worlds · Avatars探索型の場面、対話型キャラクター(リップシンク・表情)最大2分、720p級。詳細な仕様・価格は発表当時は未公開15
NVIDIA Cosmos 3(オープン)独自パイプラインの構築、研究・教育用の実習Hugging Faceで公開。GPUインフラと開発力が必要12
Tencent HY-World系列(オープン)3D世界生成の実験、ゲームシーンのプロトタイプオープンソース、ローカルへのインストールとGPUが必要23

まだ待つべきこと

  • 長い連続シーン:Genie 3の視覚記憶は約1分で、長時間探索すると同じ場所が違う形で再生成されます。133
  • 画面内の文字:看板・字幕のようなテキストのレンダリングは、公式の限界として明記されています。1
  • 複数の人物の相互作用:独立して動く複数のエージェント間の複雑な相互作用は、まだ難しい状況です。1
  • 正確な物理:製品広告のように、液体・布・破損を正確に見せなければならない場面は、依然として検証が必要です。30
権利関係のチェックツールごとに商用利用の条件が異なります(例:Marbleはプランごとに商用利用権が異なる)。10 実在の場所・建物を再現したり、特定のゲーム画面を連想させたりする成果物は、肖像・著作権・商標の問題を別途検討するのが安全です。General Intuitionがワールドモデルの販売ではなくエージェント開発を選んだ理由の一つも、ゲーム会社との著作権の衝突を避けることでした。21

教育現場で教えること

映像演出教育の観点では、ワールドモデルは「プロンプトの書き方」より空間設計とカメラ演出の価値を、あらためて引き上げます。世界が先にあり、カメラがその中を動く構造なので、ブロッキング・動線・レンズ選択といった伝統的な演出力が、成果物の質を左右します。実習課題としては、「Marbleでセットを一つ作り、その中で異なる感情を伝える三つのショットを設計せよ」のような方式が向いています。(この文書の提案)

第10章

限界と未解決の課題

華やかなデモの裏に残っている十の宿題

課題現在の状態根拠
長期記憶・一貫性視覚記憶は約1分、相互作用は数分。一般向けは60秒制限Genie 3,1 Project Genie2
視界外の状態変化見えているものは保つが、見えない所で進むべき変化に弱いPlayWorld33
物理的な正確さリアルさと物理の理解は無関係。重力・衝突・反事実の状況に弱いPhysics-IQ,30 Pebblousサーベイ46
行動空間移動・カメラ中心。精緻な操作は限定的Genie 31
マルチエージェント複数の独立した主体の複雑な相互作用のモデリングが難しいGenie 31
評価基準の不在「理解」を証明する合意された指標がない。視覚品質と機能的な有用性の相関が弱いWorldArena,32 Pebblous46
演算コストリアルタイムの高解像度生成には膨大なGPUが必要。Soraアプリ終了の理由としてコンピューティングの負担が報じられたAxios18
Sim-to-Realのギャップ仮想で学んだことが現実に移るとき、性能が低下するSPRi25
未経験領域の予測学習データにない領域(極端な気象、気候の急変)は予測できないTIME36
一般化の錯覚予測は上手でも、原理(法則)を学んでいないことがあるVafaほか31
誇張への警戒ワールドモデルへの投資ブームの中で、「ワールドモデル」というラベルは急速にありふれたものになりつつあります。新しい発表を見るときは、5章の見分け方(行動入力、リアルタイム性、一貫性の持続時間、出力形式、実際のエージェント学習の証拠)を当てはめ、デモ映像よりもベンチマークと実世界での成果指標を優先して見るのがよいでしょう。

安全と社会的な論点

DeepMindはGenie 3を、最初は学界・クリエイター向けの限定的な研究プレビューとしてのみ公開し、1 Project Genieも「複数の産業の信頼できるテスター」の意見を受けて段階的に開きました。2 実在の都市を精密に再現する技術(Seoul World Modelなど)が発展するほど、プライバシー・セキュリティ・改ざんされた映像の問題も、あわせて議論される必要があります。この部分は、まだ研究より政策の議論が遅れている領域です。(この文書の判断)

第11章

韓国の現状と課題

政府の事業、企業の研究、政策提言

この章の要点
  • 政府は2026〜2027年に340億ウォンを投じ、LGエレクトロニクス・コンソーシアムとワールドモデル・ロボット基盤モデルの国産化を進めます。
  • NAVERは、実際の都市に接地したSeoul World Modelで、国際学界から注目されました。
  • 強みは製造・ロボットの現場、弱みは大規模な映像データとコンピューティングの規模です(この文書の判断)。

政府:フィジカルAI先導技術開発事業

項目内容
主管科学技術情報通信部 · 情報通信企画評価院(IITP)
着手2026年6月9日、ソウル・麻谷(マゴク)のLGサイエンスパーク26
予算・期間総額340億ウォン、2026〜2027年(2026年は150億ウォン)28
参加(10機関)LGエレクトロニクス(主管)、マインドAI、ホリデイロボティクス、ロボティス、クラウドワークス、アルチェラ、KT、KAIST、ソウル大学、TTA26
開発対象ワールド基盤モデル(WFM) + ロボット基盤モデル(RFM)、デジタルツインベースの仮想データの生成・合成28
目標実際のロボットの最終的な動作成功率を20ポイント以上向上(現在のグローバル最高水準は14.5ポイント)26
方法ワールドモデル学習 → ロボットモデル連携 → 実証・評価 → 再学習のパイプラインを2年間で4回繰り返し、最終段階で製造・物流の現場で実証26
今後2028年に大規模な本事業へ拡大予定(報道)、28 全北・慶南の大型フィジカルAI事業と連携27

企業と研究

  • NAVER:Seoul World Model(2026年3月)。検索拡張で実際のストリートビューに接地し、ソウル・釜山などで数百メートル規模の一貫した都市映像を生成しました。24
  • LGエレクトロニクス:国策先導事業の主管。NVIDIA Cosmos 3のロボティクス開発パートナーの一覧にも名を連ねました。12
  • サムスン:AMI Labsの投資家として参加し、8 Cosmos 3のロボティクスパートナーにも名を連ねました。12
  • 斗山:Cosmos 3のロボティクスパートナー。12
  • NC AI:SPRiの報告書が韓国の基盤モデルの事例として挙げ、25 2026年9月にはLGエレクトロニクスとヒューマノイドの国策課題で協力するという報道が出ました。51

SPRiの政策提言

ソフトウェア政策研究所は、ワールドモデルを「フィジカルAI、自動運転、仮想融合の中核インフラ」と規定し、三つの方向を提案しました。25

  • インフラ:製造に特化した物理データセットの構築、高忠実度の仮想環境の開発、現場ベースの実証ループ
  • 技術:Sim-to-Realの整合性の確保、仮想センサー・システム同定など物理ベースの技術の統合、標準化・プラットフォーム化
  • 産業:物流・国防・仮想融合などドメイン特化のワールドモデルの育成、VLA・シミュレーション・製造データを統合した国家プラットフォーム
この文書の解釈汎用の生成型ワールドモデル(Genie・Cosmos級)は、膨大な映像データとコンピューティングが必要で、ビッグテックが有利な領域です。韓国が勝負をかけられるのは、① 製造・物流のように現場データがあるドメイン特化のワールドモデル、② NAVERのように実際の空間データを持つ実世界接地型のモデル、③ ゲーム・ウェブトゥーン・Kコンテンツの制作力と結びついた創作用の世界生成です。政府事業とSPRiの提言も、①に重きを置いています。
第12章

展望:何を見守るべきか

これからの12〜24か月、ワールドモデルの進捗を測る七つの指標

この章は、これまでの資料に基づいたこの文書の総合的な判断です。予測ではなく、ニュースを読むときに何を見るべきかのチェックリストとして活用してください。

指標2026年9月現在意味のある次の段階
① 記憶の持続時間約1分(Genie 3)10分以上たっても、同じ場所に再訪したときに一貫性を維持
② アクセス性米国限定・60秒・高額な購読韓国などへのグローバルな開放、API、セッション制限の緩和
③ モデルの統合Cosmos 3が推論・生成・行動を結合LLM・映像・行動をすべて扱う汎用モデルの標準化
④ 評価の標準WorldArena・PlayWorldなどが乱立業界が共通して引用するベンチマークの登場
⑤ 実世界での成果ロボットの成功率、仮想走行マイルなど企業ごとの独自指標ワールドモデル導入の前後を、公開され検証可能な形で比較
⑥ 潜在型の反撃AMI Labsの設立、V-JEPA 2.1JEPA系列がロボット・医療などで生成型を上回ることの実証
⑦ 創作ツール化Marble・GWMなど初期の製品編集ツール(アンリアル・Blender・Premiere)とのスムーズな連携、商用権利の明確化

むすびに

ワールドモデルは、「AIが世界を言葉で説明する段階」から、「世界を頭の中で動かしてみて行動する段階」へ移ろうとする試みです。2025〜2026年は、このアイデアが論文の中の概念から、製品と国家戦略へと移ってきた時期として記録されるでしょう。同時にベンチマークは、それらしい映像と実際の理解の間の距離が、依然として遠いことを示しています。

ルカンの表現を借りれば、人間と動物の知能は「世界を観察し、その中で行動しながら学んだもの」です。9 ワールドモデルの競争は、結局のところ機械にその経験をどう与えるかの競争であり、その答えがピクセルなのか、抽象的な表現なのか、二つの結合なのかは、まだ開かれています。

付録 A

用語集

ワールドモデルWorld Model
環境の状態と力学を学習し、時間の流れと行動に応じた未来を予測する、AI内部のシミュレーター。
ワールド基盤モデルWFM · World Foundation Model
大規模データで事前学習し、さまざまな課題に向けてファインチューニングして使う汎用のワールドモデル。NVIDIAがCosmosを紹介して広めた用語。
フィジカルAIPhysical AI
ロボット・自動運転車のように、物理世界を認識し、その中で行動するAI。
身体性AIEmbodied AI
身体(センサーとアクチュエーター)を持ち、環境と相互作用しながら学習・行動するAI。
潜在状態・潜在空間Latent state / space
観測(ピクセルなど)を圧縮して得た抽象的な数値表現。ワールドモデルは主にこの空間で未来を予測する。
行動条件付きAction-conditioned
行動を入力として受け取り、その結果を予測する性質。ワールドモデルと映像生成モデルを分ける中核の基準。
潜在行動Latent action
行動ラベルのない映像から、フレームの変化をもとに推論した「仮想の操作入力」。Genie 1が導入。
JEPAJoint Embedding Predictive Architecture
ルカンが提案した構造。ピクセルを復元せず、隠された部分や未来の「表現」を抽象空間で予測する。
自己教師あり学習Self-supervised learning
人がラベルを付けず、データ自体の一部を隠して当てる方式で学習すること。
自己回帰拡散Autoregressive diffusion
拡散モデルで一塊ずつ高品質なフレームを作り、塊の間を順次つなぐ生成方式。リアルタイムのインタラクティブモデルの主流。
ロールアウトRollout
ワールドモデルで複数ステップの未来を連続して予測し、展開してみること。
想像の中での訓練Imagination training
実際の環境の代わりに、ワールドモデルが作った仮想の経験の中でエージェントを強化学習させること(Dreamer系列)。
モデル予測制御MPC
候補の行動をモデルでシミュレーションして最も良い結果を出す行動を選び、瞬間ごとに計画し直す方式。
プロンプト型の世界イベントPromptable world events
Genie 3の機能。進行中の世界に、テキストで天気の変化・人物の登場のような出来事を挿入する。
ガウシアンスプラット3D Gaussian Splatting
数百万個の半透明の楕円体の粒子で場面を表現する3D技法。リアルなレンダリングが速い。Marbleの出力形式。
衝突メッシュCollision mesh
物理エンジンが衝突を計算できるように作られた、単純化された3D形状。
Sim-to-Real
仮想環境で学習した能力を実際の環境に移すこと。その間の性能の差を「ギャップ(gap)」と呼ぶ。
デジタルツインDigital twin
実際の工場・都市・設備を仮想的に複製したモデル。
VLAVision-Language-Action model
視覚と言語の指示を受けて、ロボットの行動を出力するモデル。ワールドモデルと結合して訓練・評価される。
閉ループ評価Closed-loop evaluation
AIの行動が次の入力に反映されるように、シミュレーターの中で最後まで動かしてみる評価。録画データの再生(開ループ)より現実に近い。
反事実シナリオCounterfactual
「もしあのとき違う行動をしていたら?」をシミュレーションすること。自動運転の検証の核心。
帰納バイアスInductive bias
モデルが新しいデータに一般化するときに頼る、内在的な仮定。Vafaほかの研究は、これを通じてモデルが「法則」を学んだかを検査する。
空間知能Spatial intelligence
フェイフェイ・リーが強調する概念。3D空間を認識・推論・生成し、その中で行動する能力。
付録 B

段階別の必読リスト

学習の順番に並べました。番号は参考文献の番号です。

第1段階 — 入門(概念をつかむ)

  • SPRiイシューレポート〈ワールドモデル:現実を理解するAIの進化〉 — 韓国語で最も体系的な整理25
  • DeepMind〈Genie 3: A new frontier for world models〉 — デモ映像と一緒に見る1
  • TIME〈World Models Are AI’s Next Frontier〉36

第2段階 — 古典(根っこを理解する)

  • Ha & Schmidhuber〈World Models〉(2018) — インタラクティブなウェブ版が特によい37
  • LeCun〈A Path Towards Autonomous Machine Intelligence〉(2022)38
  • OpenAI〈Video generation models as world simulators〉(2024)39

第3段階 — 最新の中核論文

  • V-JEPA 2(潜在型の代表)5 · Dreamer 4(想像の中での訓練)7 · Cosmos 3技術報告書(統合型)13 · Seoul World Model(実世界接地)24

第4段階 — 批判と評価

  • Physics-IQ30 · Vafaほか〈What Has a Foundation Model Found?〉31 · WorldArena32 · PlayWorld33

第5段階 — 全体像と産業

  • 身体性AIワールドモデルのサーベイ34 · 〈Not Boring〉World Modelsエッセイ35 · CB InsightsフィジカルAIマーケットマップ29
付録 C

参考文献

日付は原文の公開日を基準としています。すべてのリンクは2026年9月11日に確認しました。題名は各出典の原語のまま記載しています。

  1. Parker-Holder, J. & Fruchter, S. “Genie 3: A new frontier for world models.” Google DeepMind, 2025. 8. 5. deepmind.google
  2. Google. “Project Genie.” The Keyword, 2026. 1. 29. blog.google
  3. “Genie (world model).” Wikipedia, 2026년 9월 열람. en.wikipedia.org — 年表と株価反応の報道要約用
  4. Waymo. “The Waymo World Model: A New Frontier for Autonomous Driving Simulation.” 2026. 2. 6. waymo.com
  5. Assran, M. 외. “V-JEPA 2: Self-Supervised Video Models Enable Understanding, Prediction and Planning.” arXiv:2506.09985, 2025. 6. arxiv.org
  6. Mur-Labadia, L. 외(Meta FAIR). “V-JEPA 2.1: Unlocking Dense Features in Video Self-Supervised Learning.” arXiv:2603.14482, 2026. 3. arxiv.org
  7. Hafner, D., Yan, W. 외. “Training Agents Inside of Scalable World Models” (Dreamer 4). arXiv:2509.24527, 2025. 9. arxiv.org
  8. TechCrunch. “Yann LeCun’s AMI Labs raises $1.03B to build world models.” 2026. 3. 9. techcrunch.com
  9. Latent Space. “[AINews] Yann LeCun’s AMI Labs launches with a $1B seed to build world models around JEPA.” 2026. 3. latent.space
  10. TechCrunch. “Fei-Fei Li’s World Labs speeds up the world model race with Marble, its first commercial product.” 2025. 11. 12. techcrunch.com
  11. Tech Times. “Feifei Li’s World Labs Splits World Model Into Three Types: Marble Targets Simulation Linchpin.” 2026. 6. 6. techtimes.com
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ワールドモデル · 2026年9月11日時点で整理 · 数値と引用は各出典の公開時点のものであり、その後変更される場合があります。